借金の返済が苦しいために自己破産の申立を考えている人の中に、会社のことを心配している人が少なくありません。自己破産をしたことが会社に知られて解雇されたり、出世に影響したりすることを悩んでいます。
まず、自己破産をしただけで会社に知られるということはありません。自己破産を申し立てた裁判所から会社に通知が行くことは基本的にないからです。
また、自己破産をすると、国が発行している「官報」に名前や住所などの個人情報が掲載されますが、一般市民が官報を読むことはほぼありません。
せいぜい、金融業者の専門職か競売物件を扱う不動産業者が閲覧するくらいであり、官報から知られる心配もまず無いと言えます。
なお、貸金業法が改正されて規制が厳しくなり、貸金業者が債務者以外の第三者に取引のことを話すと刑事罰を科せられるため、現在では債務者の家族にも社名を名乗りません。
従って、貸金業者から会社に取り立ての電話が来て自己破産が知られるということもないのです(違法業者の場合は除く)。
自己破産によって資格制限を受ける人がいます
ただし、ある特定の業務についている人だけは会社に知られます。それは、法令によって自己破産が資格者としての欠格事由に当たるため、自己破産の手続開始決定から免責確定までの数ヶ月間(3~6カ月)は職を離れなければなりません。
免責が確定すれば復職できますが、社内外に知られることになるため影響がないとはいえません。例えば、弁護士、司法書士、社会保険労務士、宅地建物取引主任者、証券外務員、信用金庫等の会員、警備員、会社の取締役などが資格制限を受けます。
そして、裁判所から会社に通知のいくケースが一つだけあります。それは会社から借金をしている場合です。自己破産は「債権者平等の原則」からすべての債権者の債権が対象になり、金融業者からの借金だけではなく、知人や会社から借金をしていれば知人や会社も債権者であるため、同等に扱われます。従って、会社にも裁判所から意見を聴取するための通知が行きます。
そこでよく起こりがちなのが、会社には迷惑を掛けるわけにいかないからと、自己破産を申し立てる前に会社の借金だけを返済することです。
しかし、それは「偏頗弁済(へんぱべんさい)」と言って、債権者平等の原則に抵触するため免責不許可事由に当たり、免責を認められなくなる可能性があります。
また、自己破産の申立時に債権者名を記載した「債権者一覧表」を提出しますが、故意に会社だけ記載しなかった場合も同様、免責の不許可事由に該当します。
中には、金融業者から借金をしてそのお金で会社の借金を返済する人がいますが、借金をして一度も返済していない内に自己破産を申し立てると、最初から返済する気がないのに借金をしたとして債権者に対する「詐欺罪」が適用されることがあります。
ちなみに、どうしても会社に借金を返済したい場合は、免責決定後に行うことは可能です。
自己破産で免責が決定すると、債権者に対する借金の返済義務は消滅しますが、返済する責任が無くなるだけであって、返済することが禁止されるわけではありません。
つまり、返済義務がなくなっただけで、債務負担は残っているということです。これを、「自然債務」と言います。債務という名は付いていますが、返済するかどうかは本人の自由です。
ただし、約束をするような形は避けた方が無難です。契約書を作成しても免責を受けている債務である以上契約自体が法的に無効ですし、債権者平等の原則に反する行為にもなります。あくまでも債務者の自由意思で返済しているということにすべきです。
なお、自己破産は解雇事由には当たらないため、解雇されることはありません。例え、就業規則で自己破産を解雇事由としていたとしても無効となるのです。
このように自己破産したとしても、一般的には勤務先への影響は無いと言えます。しかしながら、破産とは借金を踏み倒すのと同じ意味であり、そうならないためにも借り換えやおまとめローンなどで返済計画を立て直すことが重要な事になります。
特に消費者金融は金利が高くなっているので、消費者金融を借り換えなどの手法によって、低金利な銀行カードローンでおまとめ一本化することによって自己破産せずに借金を完済できた人も多数います。(消費者金融借り換えは失敗する人もいるので注意が必要です。)
弁護士や司法書士へ破産の依頼をする前に、まずおまとめローンが可能なのかどうか、検討すべきと言えるでしょう。